父は煙になりました。
火葬場への移動で喪主の兄と兄嫁が父に付き添いました。
私は母と。姉は体調不良で従妹の車で移動することに。妹は自身の子供と向かうと。
ああ。母と。嫌だ。
嫌な予感はすぐに的中しました。
母「ことりはいいわね~。そんなに泣けて。」
私「ママは悲しくないの、パパが亡くなって。40年連れ添ってきたんでしょ…」
母「嫌あ。あたしは、パパにいつもいじめられて、お金も自由にならなかったし。それよりあれでしょ、あたしは、妹ちゃんの安いファンデーション借りたから、泣いたら取れるし、ブスになるし。ことりはいいファンデーション使っているから、泣いても取れないから、泣けるのよ。姉ちゃんも大袈裟だね、何も倒れなくてもね、倒れて頭ぼさぼさで担がれてみっともないね。ことりはしっかりしててえらいよね。」
絶句。
この時の心情を一言で。
「こいつ殺してやりたい」
掴みかかりたかった。
でも、タクシー運転手さんの顔がミラー越しに見えたんです。
憐れみの視線。
母に対してか。私に対してか。わからないけど。ただ、タクシー運転手さんのおかげで母に暴力を振るわなくて済みました。
やっと火葬場へ到着。
父は煙になりました。